【探究テーマ50選】高校の探究学習の例と失敗しない選び方
「探究学習のテーマ選びってむずかしい…」
「高校生の探究学習テーマのネタが欲しい…」
弊社は、100校以上の高校で探究学習の支援をしてきましたが、こんな声を高校の教育現場でよく耳にするようになりました。
これまでの経験から、探究学習のテーマ設定は生徒の学びを大きく左右する重要な要素だと実感しています。
適切なテーマ設定ができれば、生徒は自然と探究活動に没頭し、素晴らしい成果を上げていきます。一方で、テーマ設定を誤ると、その後の活動が形骸化してしまい、本来の探究学習の価値を損なってしまうことにもなります。
本記事では、弊社が実際に見てきた多くの事例をもとに、高校での探究学習におけるテーマ設定のコツをお伝えしていきます。
探究学習のテーマ設定で失敗する3つのケース
まずは、探究学習のテーマ設定でまずつまずくケースを知りましょう。テーマ設定で失敗してしまうケースは、大きく以下の3つに分かれます。
1. 生徍が興味を持てないテーマを選んでしまう
「SDGsについて調べよう」「地域活性化について考えよう」など、社会的な意義は確かにあるものの、生徒にとって実感の湧きにくいテーマを設定してしまうケースです。
実際にある進学校では、教員が「SDGsの17の目標から一つ選んで探究しなさい」と指示したところ、生徒からは「やらされている感しかない」という声が上がっていました。
2. 調べ学習で終わってしまうテーマを選んでしまう
「○○について調べる」という形でテーマを設定してしまうと、インターネットや文献での情報収集で終わってしまい、本来の探究活動につながりません。
たとえば「地域の歴史について調べる」というテーマでは、既存の情報をまとめる作業で終わってしまいがちです。
3. 検証が難しすぎるテーマを選んでしまう
「世界平和の実現方法を考える」「少子化問題を解決する」など、スケールが大きすぎて具体的な活動に落とし込みにくいテーマを選んでしまうケースです。
このようなテーマでは、理想論を語るだけで終わってしまい、実践的な探究活動につながりません。
これらの失敗を防ぐためには、次章で説明する具体的なステップに従ってテーマを設定していく必要があります。
分野別・高校の探究学習テーマ50選
具体的にどのようなテーマが考えられるでしょうか。高校の探究学習のテーマを作成したので、参考にしてください。
地域課題解決型(15例)
地域に根ざした探究活動は、生徒が実践的に取り組みやすく、成果も見えやすいのが特徴です。以下のテーマは、実際に多くの高校で成果を上げています。
- 空き店舗活用プロジェクト
- 伝統工芸の継承支援
- 地域特産品の商品開発
- 観光ルート開発
- 独居高齢者支援システム構築
- 地域防災マップ作成
- 商店街活性化企画
- 地域交通問題解決
- 農業の6次産業化推進
- 空き家活用提案
- 地域イベントの企画運営
- 子育て支援サービス開発
- 地域の食文化継承
- 地域スポーツ振興
- まちの魅力発信プロジェクト
特に注目したいのは「空き店舗活用プロジェクト」です。ある高校では、週末限定で空き店舗を借り、カフェを運営。地域の交流拠点として定着し、実際に収益も上げています。
グローバル課題解決型(15例)
世界規模の課題に対して、高校生ならではの視点で解決策を考えるテーマです。
- 食品ロス削減活動
- プラスチックごみ対策
- 再生可能エネルギー普及
- 途上国教育支援
- フェアトレード推進
- 海洋汚染対策
- 生物多様性保全
- 難民支援活動
- 貧困問題解決
- ジェンダー平等推進
- 気候変動対策
- 平和教育推進
- 多文化共生支援
- 国際交流促進
- 持続可能な消費推進
例えば「食品ロス削減活動」では、給食の残渣調査から始め、フードバンクとの連携、アプリ開発まで発展させた事例があります。
イノベーション創造型(20例)
ビジネスや技術革新の視点から、新しい価値を創造するテーマです。
- 学生向けプログラミングスクール運営
- ECサイト立ち上げ
- シェアリングサービス開発
- AIを活用した課題解決
- バーチャル観光ガイド作成
- デジタル教材開発
- SNSマーケティング実践
- クラウドファンディング活用
- スマートフォンアプリ開発
- オンラインイベント企画
- 動画コンテンツ制作
- ウェブメディア運営
- 学習支援サービス開発
- 健康管理アプリ開発
- 農業IoTシステム開発
- 環境モニタリングシステム
- 災害情報共有プラットフォーム
- 地域コミュニティアプリ
- オンライン販売システム
- デジタルアーカイブ作成
この分野では、特に「学生向けプログラミングスクール運営」が注目です。生徒が講師となって小中学生にプログラミングを教える取り組みが、複数の高校で成功しています。
具体的な事例を通して、探究学習のテーマがどのように発展していったのかを見ていきましょう。
探究テーマ設定の具体的な進め方4ステップ
では失敗を避け、高校生が夢中になるようなテーマはどのように設定したら良いのでしょうか。
高校での探究学習のテーマ設定では、以下の4つのステップを踏むことで、生徒が主体的に取り組める探究テーマを見つけることができます。
Step1: 生徒の興味関心を引き出す
探究学習のテーマ設定で最も重要なのは、生徒自身の「やってみたい」という気持ちを引き出すことです。
弊社が関わった高校生の事例では、ある生徒は「毎日SNSを見ているけど、友達との関係が希薄になっているような気がする」という漠然とした違和感から、「SNSが現代の友人関係に与える影響」というテーマを見出しました。
このように、生徒の日常生活での気づきや疑問から出発することで、自然と探究への意欲が高まります。
Step2: 社会課題とつなげる
個人的な興味を社会的な文脈に結びつけることで、より深い探究が可能になります。
例えば、「料理が好き」という興味から始まり、「地域の食材を使った商品開発」というテーマに発展させた生徒がいました。地域の農家や企業と連携しながら、実際に商品化まで実現させています。
Step3: 実現可能性を検討する
高校生という立場でも実践可能な範囲にテーマを絞り込むことが重要です。
「地域の独居老人問題を解決したい」という漠然としたテーマを、「高校生にできる独居老人支援の方法を考える」という具体的なテーマに落とし込んだ事例があります。
Step4: 仮説を立てる
探究活動を具体的に進めるため、検証可能な仮説を立てることが大切です。
「○○すれば△△になるのではないか」という形で仮説を立て、実際に検証していく過程で、探究が深まっていきます。
例えば、「地域の若者が伝統工芸に興味を持たないのは、情報発信が不足しているからではないか」という仮説から、SNSを活用した情報発信プロジェクトが生まれた例もあります。
このように、段階を踏んでテーマを設定することで、生徒が主体的に取り組める探究学習が実現できます。次章では、具体的なテーマ例を分野別に紹介していきます。
高校生のテーマごとの探究学習の事例
事例1:地域の少子化問題に取り組んだチーム
京都のある高校では、生徒たちが「なぜ若い世代が地域から出ていくのか」という問いから探究をスタートしました。
プロセスの展開:
- まず地域の人口動態データを分析
- 若者100人へのアンケート調査を実施
- 調査結果から「働く場所がない」という課題を発見
- 地元企業の採用担当者へのインタビューを実施
- 最終的に「高校生と地元企業のマッチングイベント」を企画・開催
この活動を通じて、10名の生徒が地元企業でインターンシップを体験。さらに3社が高校生インターン制度を新設するという具体的な成果も生まれました。
事例2:食品ロス削減に取り組んだチーム
埼玉のある高校では、家庭科の授業がきっかけで食品ロスに興味を持った生徒たちが探究を始めました。
活動の流れ:
- 学校給食の廃棄量調査からスタート
- 給食センターでのフィールドワーク
- 規格外野菜の活用方法を研究
- 地元農家と連携した商品開発
- 学校祭での販売実験
特筆すべきは、この活動が3年間続き、後輩たちに引き継がれていったことです。現在では地域のスーパーマーケットと連携し、恒常的な取り組みとして定着しています。
事例3:伝統工芸の魅力発信に取り組んだチーム
石川県の高校では、地元の伝統工芸である九谷焼の継承者不足という課題に着目しました。
探究の展開:
- 工房での職人へのインタビュー
- SNSでの情報発信実験
- 若手作家とのコラボレーション企画
- オンラインショップの開設
- 体験イベントの運営
これらの活動を通じて、伝統工芸に興味を持つ若者が増加。実際に職人を目指す高校生も現れるなど、具体的な成果につながっています。
次章では、これらの探究活動を支える教員の効果的な関わり方について解説していきます。
探究学習テーマ設定における教員の効果的な関わり方
探究学習におけるテーマ設定では、教員の適切なサポートが不可欠です。しかし、過度な介入は生徒の主体性を損なう可能性があります。ここでは、100校以上の実践から見えてきた効果的な関わり方を紹介します。
探究学習テーマ設定時の声掛け例
「これまでの経験で、モヤモヤしたことはない?」 「日常生活で気になることは?」 「もし自由に変えられるとしたら、何を変えたい?」
このような問いかけから始めることで、生徒自身の内面から探究テーマが生まれやすくなります。
ある高校では、生徒に1週間の「気づきノート」をつけてもらい、そこから探究テーマを見つけ出すという取り組みを行っています。些細な疑問や違和感を書き留めることで、意外な探究テーマが生まれることがあります。
行き詰まった時のサポート例
テーマ設定に悩む生徒には、以下のようなアプローチが効果的です:
- 具体的な事例を示す 「同じような問題意識から△△というプロジェクトが以前に生まれたよ」
- 視点を変える質問をする 「その課題を、違う立場の人から見るとどう見えるかな?」
- 実現可能な範囲に絞り込む 「高校生の立場でできることから始めてみない?」
特に重要なのは、答えを示すのではなく、生徒自身の気づきを促す問いかけをすることです。
評価のポイント
探究学習のテーマ設定における評価は、以下の観点が重要です:
- 主体性:生徒自身の興味関心から出発しているか
- 実現可能性:高校生の立場で取り組めるものか
- 社会性:他者や社会とのつながりがあるか
- 発展性:継続的な探究活動につながるか
ただし、これらの評価基準を最初から厳密に適用するのではなく、生徒の試行錯誤を見守りながら、徐々に探究を深めていく姿勢が大切です。
探究学習のテーマ選びの実践的なアドバイス
ここまで読んで「具体的にまず何をすれば良いの?」と迷った方もいるかもしれません。
探究学習のテーマ設定に悩む先生方へ、実践的なアドバイスをお伝えします。
テーマ設定のファーストステップ
まずは生徒たちに「問いを立てる練習」から始めることをお勧めします。例えば、学校の日常生活で「なぜ?」と思うことを1週間書き留めてもらう活動が効果的です。
具体的には、以下のような探究テーマが生まれるイメージです。
- 「なぜ制服のスカート丈に規定があるのか」から、学校規則の歴史的背景の研究へ
- 「なぜ給食の残飯が多いのか」から、食品ロス削減プロジェクトへ
- 「なぜ部活動の参加率が下がっているのか」から、新しい部活動の在り方の提案へ
地域との連携のコツ
探究学習を深めるためには、地域との連携が重要です。ただし、いきなり外部の方に協力を依頼するのではなく、以下のステップを踏むことをお勧めします。
- まず校内で調査・研究を行う
- ある程度の仮説や提案を形にする
- 実現可能な協力内容を具体的に考える
- 学校として正式に依頼する
このプロセスを踏むことで、外部の方々も協力しやすくなります。
継続的な探究活動にするために
探究活動を一過性のものにしないためには、以下の点に注意が必要です:
- 記録を残す
- 活動日誌の作成
- 写真・動画での記録
- インタビューの文字起こし
- 後輩への引き継ぎを意識する
- 活動の意図や背景の文書化
- 協力者との関係性の整理
- 次年度への課題の明確化
これらの取り組みにより、探究活動の質が年々向上していく事例も多く見られます。
学校全体で探究的な文化を育てていくことが、最終的には生徒たちの深い学びにつながっていくのです。
高校の探究学習テーマ選定のよくある質問と回答
Q1. 探究学習のテーマは教員が設定すべきですか?
基本的には生徒自身がテーマを設定することをお勧めします。しかし、最初から完全に自由にするのではなく、大きな枠組みを示した上で、その中で生徒が具体的なテーマを見つけていくアプローチが効果的です。
例えば「地域の課題を解決する」という大枠を示し、その中で生徒が具体的な問題を見つけていく方法があります。
Q2. 探究テーマを途中で変更してもよいでしょうか?
変更を認めることをお勧めします。
探究の過程で新たな発見があり、より良いテーマが見つかることは珍しくありません。ただし、安易な変更ではなく、それまでの活動から得られた学びを活かせる方向での変更が望ましいでしょう。
Q3. 個人とグループ、どちらがよいでしょうか?
テーマの性質によって使い分けることをお勧めします。個人の興味から出発する場合は個人での探究が、社会課題に取り組む場合はグループでの探究が適していることが多いです。
Q4. 部活動と探究活動を結びつけても良いですか?
良いと考えます。例えば、野球部の生徒が「高校野球における怪我の予防」というテーマで探究活動を行い、トレーニング方法の研究から実践まで行うといった展開も面白い事例です。
Q5. 探究テーマに「正解」はありますか?
テーマ自体に正解はありません。重要なのは、生徒が本気で取り組めるテーマかどうかです。一見単純なテーマでも、深く掘り下げることで素晴らしい探究活動になることがあります。
まとめ
以上、高校での探究学習におけるテーマ設定について、実践的な観点から解説してきました。ぜひ、生徒たちの主体的な学びのきっかけとして、この記事を活用していただければ幸いです。
「やらされる探究」から「やりたい探究」へ。その第一歩は、適切なテーマ設定にあります。生徒たち一人一人が、自分らしい探究テーマを見つけ、深い学びを実現できることを願っています。
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